コーティング方法③スパッタリング
2021.12.08
スパッタリング…またよく分からない言葉が出てきましたね。このスパッタリング、もしかしてイオンプレートと同じものと思っていませんか?
じつは私がそうでした。「ステンレスの表面に金とか黒の色をつける技術でしょ?」みたいな。
それも間違いではないのですが、イオンプレートとスパッタリングではステンレス表面に膜をつくる方法が異なります。
イオンプレートは金属を電気的に蒸発させて、その蒸気を対象物の皮膜にする技術(詳しくはコーティング方法②イオンプレートをご覧ください)。かたやスパッタリングは、金属にガスやプラズマといった力をぶつけて原子を飛び出させ、その原子が化合物となり対象物の皮膜にする技術なのです。
下のイメージ図をご覧ください。
どうです!?とっても分かり…にくいですよね。かなり簡略化したイメージ図なので仕方ないのですが、それにしても分かりにくい!
そこで、こんなものを用意してみました。
下の写真をご覧ください。
なんの写真だかお分かりですか?そう、水族館で開催されるシャチのショーです。
すごいですよねぇ。あんな大きな体であのジャンプ力。まさに圧巻です。
さて、このシャチショーで一番盛り上がるのは、大ジャンプした後の大量の水しぶきで観客をずぶ濡れにするパフォーマンスです。子どもたちはわざと最前列に陣取ってずぶ濡れになり、本人は大喜び、お母さんは大激怒、なんて光景が目に浮かびますね。
ではこれをスパッタリングに置き換えるとどうなるでしょう。
◆プール⇒真空炉 ◆プールの中の水⇒皮膜原料(例:Ti) ◆シャチ⇒ガス、プラズマ ◆水しぶき⇒皮膜原料の化合物(例:Tin)
◆子ども⇒対象物(例:SUS) ◆ずぶ濡れになった子ども⇒皮膜が形成された対象物
プールの中の水(皮膜原料)にシャチ(ガス、プラズマ)が勢いよくぶつかり、それによってプールの中の水(皮膜原料)が勢いよくはじけ水しぶき(化合物)となり、観客席最前列の子ども(対象物)にかかりずぶ濡れ(皮膜形成)になる、という訳です。
いかがでしょうか。
イオンプレートもスパッタリングも対象物に皮膜を形成することに変わりありませんが、その方法が異なるという訳です。この違いは意外と知られていないので、知っているとお得ですよ。
今回のステンレスコラム「コーティング方法③スパッタリング」いかがだったでしょうか。
こちらのコラムでは「よく聞く言葉だけどいまいちピンとこない」「先輩や同僚に今さら聞くのもちょっと恥ずかしいな」というお客様の声にお応えし、なるべく分かりやすい言葉でいろいろな技術や事例を紹介していきます。
次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。