コーティング方法⑤めっき
2021.12.08
さて、これまでいろいろなコーティングとして酸化発色やイオンプレートなどをご紹介してきましたが、今回のテーマは「めっき」です。
皆さんは「めっき」と聞いてどんなものを連想されますか?
ふだん生活している中で目にするめっき製品といえば、キラキラした車のパーツや水道の蛇口、指輪などがあります。
「めっきがはがれる」など、めっきという言葉にあまり良くない印象を持たれている方もおられるかもしれませんが、じつはめっき製品は私たちのくらしにとても身近な存在なのです。
ではめっきとはどのような技術なのかご説明すると、対象物に意匠性や機能性を持たせるために対象物を金属皮膜で覆う技術です。…ん??どこかで聞いたことがありませんか?
以前このコラムで「コーティング方法②イオンプレート」や「コーティング方法③スパッタリング」をご紹介しましたが、たしかそれらも対象物を金属皮膜で覆う技術でしたよね。ではそれらとめっきは何が違うのか…
それは対象物を金属皮膜で覆うための方式が違うのです。
上の二つの図をご覧ください。
めっきは、金属の溶けた水溶液に対象物を浸漬させることで金属皮膜で覆いますが、スパッタリングはガス雰囲気のなかで対象物を金属皮膜で覆います。
このように液体を使う方式を「湿式(しっしき)」、使わない方式を「乾式(かんしき)」と呼びます。
つまり、めっきとスパッタリング(イオンプレート)は対象物を金属皮膜で覆う、という目的は同じですがその方式が「湿式」と「乾式」で異なるということです。
※ちなみに、湿式のめっきに比べ乾式のイオンプレートやスパッタリングは比較的新しい技術で、「乾式めっき」とも呼ばれます。
めっきには、電気を使用する「電解めっき」と電気を使用しない「無電解めっき」があります。
「電解めっき」は、短時間に処理できるため安価だが皮膜の均一性や複雑形状のものには不向きで、「無電解めっき」は、皮膜を均一につけられ複雑形状のものにも対応できるが処理時間は長く高価、と言われています。
そのほか、めっきの一般的な特長には以下のものがあげられます。
◆金属以外にもめっきすることができる(例 樹脂、セラミックなど)
◆皮膜原料の金属が多く、目的によって原料を使い分けることができる。
(意匠性=金、銀 機能性=クロム、ニッケルなど)
◆浸漬時間や電流値で皮膜の厚みをコントロールできる。
(特に機能性が必要な場合は、皮膜にある程度の厚みが必要になる場合があるため)
◆一度に大量に処理することができるため、イオンプレートやスパッタリングに比べ安価である。
このような特長を活かして、世の中のさまざまな製品にめっきが施されています。
最後に、電解メッキのイメージ図を以下に示します。
とっても分かりやすく言うと、めっき液の中でマイナス極の対象物にプラス極のめっき金属がくっつくことで金属皮膜ができあがる、というのが電解メッキの仕組みです。
今回のステンレスコラム「コーティング方法⑤めっき」いかがだったでしょうか。
こちらのコラムでは「よく聞く言葉だけどいまいちピンとこない」「先輩や同僚に今さら聞くのもちょっと恥ずかしいな」というお客様の声にお応えし、なるべく分かりやすい言葉でいろいろな技術や事例を紹介していきます。
次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。